1月24日(土)に、東京大学駒場Iキャンパスにて、第15回談話会を開催することとなりましたのでお知らせいたします。

今回の談話会は神経生理学の最前線と題しまして、理化学研究所 脳科学総合研究センター(理研BSI)で研究員をなさっている田尾 賢太郎さん、小澤 貴明さん、天羽 龍之介さんをお招きし、最近の研究成果についてお話しいただきます。また談話会の後半は座談会の部として、研究以外のこともお話しいただきます。

皆様のご来場を心よりお待ちしております。

日時:2015年1月24日(土) 受付 14:30~、 談話会 15:00~18:30(予定)、 懇親会 19:00~
場所:東京大学駒場Iキャンパス 16号館126/127教室(キャンパス内地図
アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map02_02_j.html
会費:談話会 無料、懇親会 3500円(予定)

講演者紹介

田尾 賢太郎(たお けんたろう)さん
 
理化学研究所 脳科学総合研究センター システム神経生理学研究チーム 研究員
演題「オプトジェネティクスとシステム神経生理学の融合的アプローチ」
要旨:
覚醒下行動中の動物(サルやラットなど)における、シリコンプローブやテトロードなどの多電極をもちいた大規模細胞外記録は、認知機能に関与する神経活動様式の解明に大きく貢献してきた。しかしながらこのような手法には、記録される対象となる神経細胞を原理的に同定できないという欠点があった。多種の細胞から構成される局所回路が多数の脳領域と相互に連絡しているような神経回路を、電気生理学的に解きほぐしていくにはどのようにアプローチすればよいか?この問題を解決する助けとなるのが、近年著しく発展した光遺伝学的手法の応用である。遺伝学的に標識された特定の神経細胞群にチャネルロドプシンなどの光感受性タンパク質を発現させ、記録電極近傍を局所的に光刺激することで、たとえば大脳皮質の細胞外記録において特定の遺伝子マーカーを発現する抑制性神経細胞の発火パターンを同定したり、ドパミンのような神経伝達物質を放出する細胞の軸索終末を刺激することで、局所回路の神経活動が受ける影響を検証するような実験が実施されるようになってきた。さらには神経突起を逆行性または順行性に標識するようなウイルスを応用して、特定の脳領域に投射する神経細胞群のみを選択的に記録・制御することも可能である。今回の発表では、このように光遺伝学とシステム神経生理学が技術的に統合されてきた歴史について概説するとともに、この実験系を活用してどのような問いに挑めるのか、私自身の研究内容にも触れつつ紹介したい。
 
小澤 貴明(おざわ たかあき)さん
 
理化学研究所 脳科学総合研究センター 記憶神経回路研究チーム 研究員
演題「扁桃体-中脳水道周囲灰白質回路による予測誤差様神経活動の生成と恐怖記憶の制御」
要旨:
「聴覚性恐怖条件づけ」は,げっ歯類における恐怖学習の観察に適した課題である。この課題で動物は,音CSが電撃USの到来を予測する こと を学習し,CSの単独提示は動物の恐怖反応(フリージング等)を引き起こすようになる。この条件づけを複数回行うと,CSにより誘発される ラットのフリージング量は上昇するが,最終的にはUSの強さに応じた漸近値に到達し,より強いUSを用いない限り,以降の条件づけは学習 を促 進しないことが知られている(恐怖学習の漸近化(頭打ち))。この現象は,過剰な恐怖学習を防ぎ,嫌悪的体験の強さに応じた適切な恐怖学習を 可能にする上で,個体にとって重要な能力あると考えられるが,その神経基盤はほとんど解明されていない。興味深いことに,我々は恐怖記憶 の中 枢である扁桃体外側核(LA)が同じ強さの電撃USに対して一定に反応しているのではなく,実際には,連合学習の理論的説明によく用いられる 「予測誤差」と類似した反応を示すことを明らかにした。すなわち,(1)条件づけの試行回数の増加とともに, CS提示後に到来するUSに対するLAの応答は減少する。(2)しかしながら,十分な条件づけの後でもCSを提示しないとLAのUSに対する応答の減少は 認められない。
演者は現在,このLAのおける予測誤差様神経活動と恐怖学習の漸近化現象の関係性に着目し,(1)LAにおける予測誤差様神経活動の生 成回 路メカニズム,及び(2)予測誤差様神経活動と恐怖学習の因果関係について,in-vivo電気生理,光遺伝学,行動解析を用いることで研究 している。これまでの一連の研究により,中脳水道周囲灰白質と扁桃体の相互作用によってLAにおける予測誤差様神経活動および恐怖学習の 漸近 化が引き起こされていることが明らかになった。
 
天羽 龍之介(あもう りゅうのすけ)さん
 
理化学研究所 脳科学総合研究センター 発生遺伝子制御研究チーム 基礎科学特別研究員
演題「手綱核-縫線核神経回路は危険の予測価値をコードする事で能動的回避行動を可能とする」
要旨:
動物は危険を予測した際にしばしばパニック反応を示す。しかし、このような反応は主に初めの内に限られ、次第にこの予測は実際の脅威を回避することに役立てられる。私達は電気生理学的手法による神経活動計測から、ゼブラフィッシュ腹側手綱核(ventral habenula)の神経細胞が、経験依存的に危険を知らせる信号に対して持続的な活動の上昇を示す事を見出した。また、腹側手綱核の活動は正中縫線核(median raphe)のセロトニン神経細胞の活動を上昇させることも明らかにした。この腹側手綱核の神経活動は将来の危険に対する予測価値を表現していると考えられ、実際の行動の結果と比較することで、危険な環境からより安全な環境への回避方法を学習する際に利用されると予想される。実際に、腹側手綱核から正中縫線核への神経伝達を遺伝学的に阻害すると、古典的恐怖条件づけの際のパニック反応は維持されるが、能動的回避学習における適応的な回避行動の学習が損なわれた。さらに、オプトジェネティクスにより腹側手綱核の活動を操作し、負の予測価値を人工的に植え付ける事で、場所回避行動が引き起こされた。これらの観察より、腹側手綱核-正中縫線核神経回路は危険の程度の予測値を表現し、起こりうる危険に対する適応的な回避行動のプログラムに必須であることが明らかになった。

スケジュール

14:30-受付開始
15:00-15:05導入
第1部 研究の部
15:05-15:35ご講演1(田尾さん)
15:35-15:40休憩
15:40-16:30ご講演2(小澤さん)
16:30-16:40休憩
16:40-17:30ご講演3(天羽さん)
17:30-17:40休憩
第2部 座談会の部
17:40-18:30座談会
 トーク内容(当日多少変更する可能性もあります):
 ・ラボを選んだ理由や研究テーマ設定における紆余曲折など
 ・今後のキャリアについて
 ・自身が感じている現在・未来の神経科学のトレンド
 ・研究を行うときの生活リズム
19:00-懇親会(渋谷を予定)

参加申込

〆切:
2015年1月16日(金)
談話会のみ、あるいは懇親会のみの参加も大歓迎です。
お申し込みが完了した場合は自動返信メールがご記入のメールアドレスに送られますので必ずご確認下さい。
1時間以内に自動返信メールが届かない場合はお手数ですが再度お申し込み下さい。
主催:
脳科学若手の会
世話人:
杉浦 綾香(東京大学大学院 総合文化研究科)
磯村 拓哉(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
お問い合わせ:
info@brainsci.jp