脳科学若手の会 夏の学校2020

脳科学若手の会 夏の学校2020

 

 

 「脳科学若手の会 夏の学校2020」開催のお知らせと参加受付のご案内をさせていただきます。

 脳科学若手の会は「脳科学・神経科学関連領域の若手研究者が互いの分野の壁を超えて共に学び合い、交流するための場を提供する」という目的のもと、定期的に研究会を開催しております。この度は新型コロナウィルスの感染拡大を防止するため、オンライン開催とさせていただきます。

 本研究会では、理研CBS 数理脳科学研究チーム チームリーダーの豊泉太郎先生にご講演いただける運びとなりました。

 豊泉先生には、シナプス可塑性のモデリングについてご講演いただいた後、異なる分野の研究者が共同研究テーマを考えるワークショップを行っていただく予定です。

 詳細につきましては以下をご覧ください。

 

【イベント名】脳科学若手の会 夏の学校2020

【日時】2020年8月30日(月) 14:30~18:00(予定)

【開催方法】 Zoom

【対象】「計算論的神経科学」「共同研究」について興味を持つ全国の大学生・大学院生など

【参加申込】  こちらのGoogleフォームから、事前登録をお願い致します。

【注意事項】 本研究会では、ライブの時間を有意義にするため、参加の皆様にあらかじめ講演動画をご覧になっていただき、講演内容に関する質問を事前に募集します。当日のライブでは豊泉先生からのご回答や参加の皆様からの追加の質疑を行い、インタラクティブな議論をしていただくことになります。予習前提のイベントであることを理解した上でのご参加をいただきますようお願いいたします。

締切:2020年7月31日(金)

 ※ イベント準備の都合上、参加予定の方はお早めに登録頂けますと幸いです。

 ※ 応募者多数の場合は抽選により参加可否を決定させていただきます。

 

 質問等、お問い合わせは以下のメールアドレスまでお気軽にご連絡ください。

 脳科学若手の会: even@brainsci.jp

 

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豊泉 太郎 先生

(理研CBS 数理脳科学研究チーム チームリーダー)

【講演題目】「脳が学習する仕組みを理論的に研究する」

【ワークショップ】「異分野を横断する研究の計画」

【要旨】 動物は環境に適応することで生存しています。学習したときに脳の中で起こるシナプス可塑性は、この適応の過程で重要な役割を担っていると考えられています。シナプス可塑性として、シナプス前後のニューロンの一連の活動によって引き起こされるヘッブ型可塑性が良く知られています。しかし、ニューラルネットワークモデルでヘッブ型可塑性をシミュレーションすると、同時に活動するニューロン集団間のシナプスが更に強化されることで、非生理学的な神経活動が生じてしまいます。我々は、脳がこのような困難をどのように克服して、環境に適したニューラルネットワークを学習しているのかを研究しました。

 前半では実験的知見をモデルに組み込むことで、脳がどのように安定した学習を行っているかを研究します。近年の実験で、シナプスは可塑性によって変化するだけでなく、つねに揺らいでいることが分かってきました。ヘッブ型可塑性を示すニューラルネットワークモデルにシナプス揺らぎを組み込むことによって、生理学的なスパイン体積分布および安定した記憶パターンの保持が可能であることを示します。さらに、揺らぎの過多によって、自閉症様の学習遅滞が再現できることを説明します。

 後半では、より理論的な視点から、ニューラルネットワークが環境の情報をより効率よく表現するためには、どのような学習則が最適なのかを考察します。これまでの研究で情報伝達効率の最大化から導かれるシナプス学習則によって、シナプス可塑性の発火率依存性やスパイク時刻依存性が説明できること示しましたが、我々はその学習則を出力ニューロンが複数ある状況にも拡張しました。この学習則では、シナプス前後のニューロンに一連の活動があったときにシナプスが変化し、その変化は広域信号に応じて調節されます。この学習則によって、出力ニューロン間に密な相互結合を必要とすることなく、環境中の独立信号を分離し、効率の良い情報表現を獲得できることを示します。

【略歴】

2001年3月 東京工業大学 理学部 物理学科 卒業

2003年3月 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 修士課程 修了

2006年3月 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 博士課程 修了

2006年4月 日本学術振興会 ポスドク研究員(理化学研究所 脳科学総合研究センター,コロンビア大学 理論神経科学センター)

2008年3月 The Robert Leet and Clara Guthrie Patterson Trust ポスドク研究員(コロンビア大学 理論神経科学センター)

2010年4月 理化学研究所 脳科学総合研究センター 基礎科学特別研究員

2011年4月 理化学研究所 脳科学総合研究センター チームリーダー

2018年4月 理化学研究所 脳神経科学研究センター チームリーダー

2019年4月 東京大学大学院 情報理工学系研究科 数理情報学専攻 連携教授

 

以上

脳科学若手の会